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切なく、儚く、そして胸の奥を静かに締めつける物語だ。
もし、この現実のごこかに爽子のような少女がいたならあなたは、彼女の孤独にどれほど寄り添えるだろう。
その前に、差し伸べるべき手を、あなたは本当に伸ばせるのだろうか。
戸田彬弘という映画作家は、フィクションを通して、観る者ひとりひとりに、容赦のない問いを突きつけてくる。
その問いは、優しさの形をしているだけに、なおさら深く胸に刺さる。

染井為人(小説家/『正体』『悪い夏』)

制度が悪いとか、運命だとか、何かのせいで片付けられない事実がある。
遠い場所じゃなく、手の届く距離で起きている。
本当に困窮している人が、分かりやすくSOSを出せる能力があるかは別問題だと改めて気付かされた。
自分に何が出来るかは分からないが、考えるきっかけになる素晴らしい作品。

吉田恵輔(映画監督)

繊細なまでに計算し尽くしたインティマシー・シーンにおける描写、更に観客の思考力を信じ抜いた大胆な脚本。ハードな内容なだけに目を背けたくなるが、それをしてしまったら自分にとって都合の良い社会の中で生きていく道を選んだ無責任な人間になってしまう。本作はフィクションでありながら現実の断片を集めて作られた真実の叫びだった。
本来、映画は私達が生きている社会を知る為の表現方法であり、メッセージ性があってしかるべきだ。それを念頭に置いて本作を観れば、短絡的に善悪を決められるほど社会の構図も人間関係も簡単ではないことに、この結末から気づいてしまうだろう。これを知ってしまった以上、私達に一体、何が出来るのか。それが一番、重要なことだ。

伊藤さとり(映画評論家)

重厚かつ大胆なアプローチで人の凄絶な生き様に全力投球で迫った「市子」。その衝撃的な記憶も冷めやらぬうちに生み出された「爽子の衝動」は、けっして息抜きに作られた小品などではない。「市子」にも負けず劣らず凄絶な人間の生き様を、ストイックに、野心的に、鋭利に切り取った結果が、図らずも45分という短編のサイズに濃縮されたのだ。今、社会の闇に埋もれて、人々の普段の生活からは見えにくくなっている人間たちを描かせて、戸田彬弘の右に出る者はいない。

暉峻創三(映画評論家/大阪アジアン映画祭プログラミング・ディレクター)

生まれたときから人生は決まっている—そう錯覚させる不条理な現実。
絶望的な環境の中でも、希望を見つけて懸命に生きる爽子の姿を、私はただ静かに見つめることしかできませんでした。
彼女を取り巻く環境や理不尽な世相を的確に映し出し、強く訴えかける本作のあり方に、映画人として深い誇りと敬意を感じます。
これは映画の中だけの話ではなく、現実に起こり得る物語です。
たった45分間、あなたはこの現実から目をそらさずにいられますか。

花瀬琴音(女優)

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